インフラって何?安定性・将来性、働くのに向いている人まで詳しく解説!

ニュースなどでたびたび耳にすることがある「インフラ」

私たちの暮らしになくてはならないもので、仕事として考えたときに安定性・将来性がある分野みたいだけれど、実はわかっているようでよくわかっていない。

「インフラって何のこと?」

「インフラって何の略称?」

「インフラ業界ってどんな仕事をするの?」

「インフラの仕事をするにはどこで働く?」


など、ギモンだらけの高校生も多いのでは?

そんな高校生の「インフラって何?」というギモンに、インフラのスペシャリストの先生がわかりやすく答えてくれたから紹介するよ。

目次

教えてくれたのは
日比野直彦先生

国立大学法人 政策研究大学院大学 政策研究科 教授・インフラ政策コース ディレクター。

インフラ政策、交通政策、交通計画を専門分野とし、過去にはマサチューセッツ工科大学客員教授も務める。

政策研究大学院大学で教育・研究に従事するほか、国土交通省などの委員会にも出席し、インフラにかかわる多くのプロジェクトに参画している。

インフラとは?

インフラって何の略称?言い換えは?

インフラとは「インフラストラクチャー(Infrastructure)」という英単語の略称。

構造という意味をもつ「Structure」と、下にという意味をもつ「Infra」を組み合わせた単語で「下支えするもの」「下部構造」といったニュアンスをもつ。

インフラって何を指すの?

インフラとは「社会や日々の生活を支える基盤」のこと。

具体的には、電気・ガス・上下水道・通信・道路・鉄道・空港・港湾などがある。

安全で快適な生活を送るためにインフラは必要不可欠なものであり、インフラが整備されていなくては人々の暮らしや仕事もままならなくなる。

住んでいる場所や学校の周りを少し見渡してみただけでも、実はたくさんのインフラに囲まれていて、インフラは私たちの生活を支える重要な役割を果たしてくれている。

インフラが整っていないとどうなる?

​※水道がない地域では、水をくみに行くために学校に通う時間がなくなる子どもも

毎日学校に通うなど、「当たり前の日常」が送れなくなる

インフラは「快適で安定した生活になくてはならない」もの。

インフラが整っていないと、「水道の蛇口をひねったら清潔な水が出てくる、毎朝、時間どおりに電車で学校に行くことができる、夜暗くなったら電気をつけて明るい空間で過ごせる」といった、当たり前の日常も送ることができない。

インフラが整っていない国では、何時間もかけて水をくみに行くために学校に通えない子どもたちも存在する。

インフラの格差は、教育格差や経済格差にもつながっていく深刻な問題でもあるのだ。

\Point/
水道がなければ飲みたいときにすぐ水が飲めず、道路がなければ学校にも行くことができません。

インフラを整えるとは、市民の安全で快適な暮らしのために環境を整えていくことだと言い換えられます。

インフラの整っている日本ではあまり意識することがありませんが、グローバルな視点で見ると、インフラが整っていないことで安全で快適な暮らしを送れていない国はまだまだたくさんあるんですよ。(日比野先生)

インフラの種類は?

※当たり前に思いがちな「電気・ガス・水のある暮らし」もインフラに支えられている

インフラとは、電気・ガス・上下水道・通信・道路・鉄道・空港・港湾などのこと。

それぞれ詳しく見ていこう。

電気・ガス・上下水道・通信

暮らしに密接するインフラとしては、エネルギーと呼ばれる電気やガス、飲み水を供給する水道、インターネット・スマートフォンに用いられる通信など。

暗くなったら電気をつけて明るくする、温かいごはんを食べてお風呂に入る、スマートフォンで友達に連絡を取るといった何気ない日常は、すべてこれらのインフラに支えられている。

まさに今の私たちの生活にとって「快適で安定した生活になくてはならない」ものだ。

道路・鉄道・空港・港湾

人や物を全国各地や世界に運ぶために欠かせないのが、道路・鉄道・空港・港湾といったインフラ。

これらのインフラが整っていることで、国内や海外の好きな場所に行けたり、遠くの人に物を届けたり、輸入・輸出ができたりする。

例えば、インターネット経由で購入した遠い地域のショップの商品が無事に自宅に届くのも、こうしたインフラが整っているからこそ。

堤防・防波堤・防潮堤

暮らしを快適にするためのインフラのほかに、災害を防ぎ、人々の命を守るためのインフラもある。

河川の氾濫、洪水、津波や高潮による被害を防ぐ堤防・防波堤・防潮堤などが、災害を防ぐためのインフラとして機能している。

インフラ業界ってどんな仕事をするの?

※身近にたくさん存在するインフラ。完成した後のメンテナンスも重要な仕事だ

インフラは「つくる」だけでなく、その機能が損なわれないよう「維持管理=メンテナンス」していくことがとても大切

インフラ整備が一定のレベルで進んでいる日本では、インフラを維持していくための、定期的な点検や修繕・更新の仕事が増えている。

また、インフラの仕事にはさまざまな段階があり、それぞれの分野のプロフェッショナルが業務を分担している。

それぞれの段階で何が行われているのか、詳しく見てみよう。


インフラの計画立案

国づくり・地域づくりの観点で、どこにどのようなインフラをつくるべきかを議論する。

インフラの設計

計画立案に基づいて、どのようなインフラをつくるかを詳細に決めていく。

インフラ施設の建設工事

計画・設計に基づいて建設会社が施工する。

インフラの維持管理

インフラは完成したら終わりではなく、その先何十年と、その機能性と安全性を保っていくための維持管理がとても大切になる。

維持管理が疎かになると、橋やトンネルの崩落など大事故を引き起こす恐れがあるため、定期的なメンテナンスと修理・更新が欠かせない。

インフラの仕事をするにはどこで働く?

※計画立案~設計・建設工事~維持管理まで、多くの人がインフラの仕事に携わっている

現在では民営化の動きが広がり、国や地方自治体だけでなく、さまざまな民間企業がインフラの整備・維持管理に携われるようになった。

公務員のほか、電力会社、ガス会社、水道会社、通信会社、道路会社、鉄道会社、建設会社など働く場所はさまざまあるが、何のインフラを対象に仕事をするか、整備・維持管理のどの段階に携わりたいかによって選択肢が変わってくる。

【インフラのプランをつくり発注する仕事なら①】中央省庁や地方自治体

国や地方自治体が所有・管理するインフラは、公務員がインフラのプランをつくり、設計や建設工事を発注している。

国土交通省など土木工学にかかわる省庁の国家公務員、県庁や市役所の土木専門職として働く地方公務員の道があり、いずれも公務員試験に合格する必要がある。

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【インフラのプランをつくり発注する仕事なら②】インフラ施設の管理・運営会社

国や地方自治体が管理するインフラのほか、電力会社、ガス会社、道路会社、通信会社、鉄道会社が管理・運営を行っているインフラも。 それぞれ専門分野のインフラ事業を行っているため、どの分野のスペシャリストを目指すのかを考えたうえで、働く場所を決めるといいだろう。

【インフラの詳細なプランをつくり、設計する仕事なら】シンクタンク、建設コンサルタント会社

国や地方自治体、インフラ施設の管理・運営会社などからの発注を受け、インフラの詳細なプランをつくり、設計する仕事がしたいなら、建設予定地の周辺調査・分析・立案に特化したシンクタンク、周辺調査・計画・設計までを行う建設コンサルタントが就職先の候補の一つだ。

【インフラをつくる仕事なら】建設会社

現場でインフラ建設に実際に携わりたい人は、建設会社が働く場所の候補になる。

インフラが完成していくダイナミックな現場に立ち会いたいなら、建設会社で技術者として働くのがおすすめだ。

\関連する資格について/
土木工事は国づくり・地域づくりの根幹を担う、建設業界の中でもきわめて重要性の高い分野。

専門的な知識・技術が必要となるため「土木施工管理技士」「技術士」などの資格も存在する。

「土木施工管理技士」は、道路や橋などの建設工事において、土木・建設業の技術者を統括・管理する役割を担う施工管理のスペシャリスト。

責任者として各現場に必ず配置される必要があるため需要が高く、受験資格として必要な実務経験を積みながら資格取得を目指す人も多い。
土木施工管理技士を目指せる学校を探す

インフラ業界で仕事をするには?進路は?

※インフラ業界で働くための進路選択とは?詳しい進学先をチェックしよう

工学部・理工学部・建築都市学部などで「土木工学」を専攻する

どんなインフラにどのように携わりたいかによって働く場所に違いはあるものの、インフラ業界は大手企業が就職先のメインになることもあり、四年制大学の工学部・理工学部・建築都市学部や専門学校に進学し、インフラの構築の方法や技術を学ぶ「土木工学」を専攻する人が一般的。

最近では「土木工学」から「社会基盤学」「市民工学」「宇宙環境」などに学部・学科名を変更している学校も多いため、「土木工学」という名称にとらわれず、学べる内容やカリキュラムをチェックして進学先を選ぶようにしよう。

土木工学についてもっと知りたい人はこちら

大学院には進学したほうがいいの?

専門性を高めるため、土木工学分野では、大学院に進学するケースが一般的。

ただし、土木工学系は学部卒でも十分就職に強く、早く現場に出て実務経験を積むことを優先するため、学部卒で公務員になる学生やインフラ系企業に就職する学生もいる。

\Point/
インフラの仕事をしたいなら、土木工学系の学部・学科に進学するのがおすすめですが、文系出身の事務系の職員もおり、土木技術者でない人でもインフラの仕事にかかわることは可能です。

また、今後は海外をフィールドとしたインフラの仕事が増加していく傾向にあります。

「海外のインフラ建設に携わりたい」「グローバルな仕事をしたい」という海外志向の学生さんであれば、語学力は当然のこと、異文化を理解したうえでコミュニケーションができる力、全体を俯瞰してマネジメントする力も求められるでしょう。(日比野先生)

インフラ業界の現状や将来性は?

※国の成長とともに発展してきたインフラ。この先の展望と課題とは?

インフラは、文化的な生活をするうえで不可欠なサービス・設備であることから、たとえ利用者が減ったとしても「なくなる」ということが基本的になく、業界としての安定感は抜群。

また、インフラは完成して終わりではなく、その後も安全に運用するための維持管理・更新の仕事が半永続的に存在し続ける。

インフラは人口密集地から過疎地まで、全国各地に点在するため、ニーズは長期的かつ広範囲にわたる。

インフラメンテナンスの需要が高まる

人口の多い首都圏では、大規模な鉄道・道路の建設が進められており、インフラ業界の仕事量は全体的に増加。

完成後も、国や経済の発展、安心・安全な生活のためには、日常的な点検など維持管理を担う人材が必要不可欠。

この先もしばらくの間、インフラメンテナンスの需要が高まり続けるのは明らかだ。

また、インフラの耐久年数は一般的に50年前後といわれており、国内で利用されているインフラは高度経済成長期(1960年代前後)に一斉整備されたものが多いため、全国で一気に寿命を迎えているという現状がある。

実際、先に経済発展を遂げていたアメリカでは、ある時期に橋などが崩落して命にかかわる事故が多発したこともあり、インフラメンテナンスの重要性が再認識された。

つくったインフラを手入れせず放置することで起こる事故は「人災」。

今あるインフラを安心してより長く利用し、人々の命を守るためにも、維持管理は疎かにできない重要な仕事なのだ。

災害に強いまちづくりが求められる

快適で安定した生活を維持することとは別に、インフラには「人の命・財産を守る」という重要な役割がある。

災害に強いまちづくりもその一つ。

河川の氾濫、洪水、津波や高潮による被害を防ぐために堤防・防波堤・防潮堤を造ったり、災害時でも救急車や消防車が走行しやすい街路を整備したり、大規模停電を引き起こさないために電力インフラの強靭化を推進したりと、国や企業が一体となって対策を進めている。

人からAIへ仕事が置き換わる?

インフラの維持管理は、都心部だけでなく、郊外や過疎地においても同様に必要になる仕事。

しかし、人口が減少している地方ではインフラの安全性を判断できる技術者が不足している。

そのため、産業ドローンが現地調査・情報収集をし、そのデータを都心の会社でAIを活用して解析&フィードバックするなど、少ないマンパワーで効率よくインフラの維持管理ができるよう、人からAIへ仕事が置き換えられるケースも。

政府はインフラ長寿命計画として「持続可能なインフラメンテナンスの実現」を掲げており、AIや産業ドローンの導入は今後も全国規模で増えていくと予想される。

インフラ業界で安定的に仕事を得るためには、機械には代替できない技術や独自の知識を身につけていることが必要だという時代が、遠くない未来にやって来るかもしれない。

\Point/
海外のインフラが整っていない国では、新しいインフラを「つくる仕事」の需要が高く、日本のインフラ建設の技術力と実績を生かせるチャンスがあります。

ただし、日本のインフラはハイスペックだからこそ、それがその国に本当に必要なグレードなのか、コストバランスは適正かを吟味しつつ、相手が望む物を正確に把握することが大事になります。

建設後のことも含め、相手の立場になって、他国との競争の中で選ばれる提案ができるかどうかが、海外でインフラ整備の仕事をするカギになるでしょう。

ハイスペックな物をつくれば選ばれるという単純な話ではなく、海外でインフラ建設の仕事を安定的に続けるためには、さまざまな努力が必要になるのです。(日比野先生)

インフラ業界で働くのに向いている人は?

※人々の命や財産を守り、社会を根底から支えるやりがいのあるインフラの仕事
インフラの仕事は、縁の下の力持ちが得意な人、長期的な視野で物事に取り組める人、世のため人のためになる仕事がしたい人に向いているのだそう。

日比野先生に、そのポイントを詳しく聞いてみた!

1.縁の下の力持ちが得意な人

国づくり、まちづくりでもあるダイナミックなインフラの仕事は、大勢の人のチームワークが不可欠であり、「縁の下で力を発揮できるタイプの人」に向いています。

個人としての名前は残らないものの、自分が手がけたことが地図や歴史の中に残る仕事であり、国や経済を発展させたり、人々の命や財産を守ったりするインフラの仕事に誇りをもてる人は、プロフェッショナルとして長くインフラ業界で頑張り続けることができるでしょう。(日比野先生)

2.長期的な視野で物事に取り組める人

インフラは計画から建設までに長い時間がかかり、完成してもそこで終わりではなく、メンテナンスを繰り返しながら数十年と長く付き合っていくことになります。

そのため「短期的に結果を出したい人よりも、長期的な視野で物事に取り組める人」に相性のいい仕事です。(日比野先生)

3.世のため、人のためになることによろこびを感じられる人

公共性の高いインフラの仕事は、自分の利益や幸せのためだけでなく、社会全体の利益や幸せを追求できる「世のため、人のためになることによろこびを感じられる人」が向いている仕事です。

「これまで橋がなかった場所に橋を造って、その地域に暮らす人がよろこぶ姿を見られる」という経験も、インフラの仕事ならではのやりがいだと言えるでしょう。(日比野先生)

高校生の皆さんへ。日比野先生からのメッセージ

※若手の人材の活躍が求められているインフラ業界。ぜひチャレンジしてみて
インフラの仕事に興味が出てきたら、次に気になるのは進路選択だと思います。

「土木工学」を学ぶといっても、実際にどんな勉強をするのか、どんな仕事につながるのかよくわからない人もいるかもしれません。

そこで、進路選択の際に注目してほしいのが、その学校、学部、学科に在籍している「先生」。

インフラの中でもどの分野が専門なのか、これまでにどんな実績があるのか、社会とどうかかわっているのかを知ることで、学べる内容と将来の自分の姿が具体的になるはずです。

逆に「インフラの中でもこの仕事がしたい」と目標が定まっている学生さんは、自分がやりたいことと近いことをしている先生がいる学校を選ぶのがおすすめです。

偏差値だけでなくどんな学びができるのかを大切に、夢へと近づく第一歩を踏み出してほしいですね。(日比野先生)

まとめ

これまでもこれからも、人々の生活になくてはならないインフラの仕事。

誰かが支えてくれていたことを、今度は自分が支える立場になりたい。 自分が暮らす国やまちをよりよい場所にしたい。

そんな想いをもったなら、ぜひチャレンジしてほしいやりがいのある仕事だ。

興味がある高校生は、まずは「土木工学を学べる学校」を探してみよう。

土木工学についてもっと知りたい人はこちら

監修/日比野直彦 文/ミューズ・コミュニティー 構成/編集部